「食」の問題の解決に向けて、みんなでアクションする1ヵ月。
「世界食料デー」月間2017 10/1-31

食育施設 ごはんミュージアムスタッフ
堀田志津子さん

vol.01インタビュー

世界では、十分に食べることのできない人の数が急増しています。一方、食料の約6割を輸入に頼りながら、その多くを捨ててしまっている私たち日本人。日本人が、一人ひとりの食生活を見直す時にきています。そんな中注目されているのが、地球規模での食料事情や環境問題、食の大切さなどについて考える“食育”です。仕事として食育に関わるかたわら、プライベートで日本のおいしい食材を紹介する会を主催する堀田志津子さんにお話を伺いました。

日本人の食を見直したい

東京・有楽町で食育施設スタッフとして働く堀田さん。もともとは国際協力の仕事に就きたいと考えていたそうです。「高校生のときに湾岸戦争のドキュメントがテレビに流れ、映し出された石油まみれの鳥が衝撃的でした。それから環境問題や食料問題に興味をもち始め、大学で国際関係を勉強しました。ですが、その頃は遠い国で起こっていることを身近な課題として捉えることがでず、解決のために自分が何をしたらいいのか、具体的な行動に結びつかなかったんです」。

大学卒業後、まずは経験を積もうと宮崎県の有機農場で半年間のボランティア活動に参加。この体験がきっかけで、日本人の“食”に目を向けるようになりました。「農作業中の風の変化で季節の移ろいを感じたり、育てた鶏を絞めてお祭りで食べたり。そんな経験から、食べ物を育む自然と土への感謝の気持ちと、食べることは命をいただくことだ、という実感が生まれました。同時に、自分が海外に出て食べ物に困っている人を助ける前に、あふれるくらいの食べ物に囲まれて暮らす私たち日本人の食べ物への感覚を見直したいと思いました」。

子どもたちを育む「食体験」

まずは日本の食材の魅力を伝えることから始めたいと、ご飯食を身近に感じてもらう食育施設「ごはんミュージアム」で働き始めた堀田さん。空きビンでお米を精米したり、おにぎり教室を開いたりと、子どもたちを対象に、五感で食を体験するプログラムを実施しています。「ラップを使わずに素手でおにぎりを握ってもらいますが、水加減がわからなくてぽろぽろご飯粒をこぼしてしまう子も。でも、失敗しながらも、お米に触ったり、においをかいでみたりすることで、普段は何気なく食べている食材に、すべての感覚で向き合うことが、子どもにとって何より重要な経験だと思っています」。

子どもたちに、食べる喜びとご飯のおいしさを再認識してもらう一方で、ご飯食離れが進んでいる現実を目の当たりにすることもあるそう。「子どもたちに昨日食べた物を思い出してもらい、3食とも主食がご飯だった子に手をあげてもらうと、30名中5名ぐらいしか手をあげません。他にも、学校の先生に、給食で白いご飯が出ると残りやすいと聞いたことがあります。ご飯が炊き上がるときの匂いを『気持ち悪い』と嫌がる子どももいるそうです」。こうした仕事を通して堀田さんは、食の選択肢がたくさんある日本で、子どものころの食体験が、大人になったときにどのような食材を選ぶようになるのか、その選択の礎になると気づいたといいます。

日本の食材を知る楽しさ

堀田さんは休日にも、友人や知人と一緒に、お米やお味噌など日本のおいしい食材を食べ比べる会を開催しています。「日本で生産される食材には、おいしくて品質の高いものがたくさんあるのに、安い農産物が海外から入ってくることによって生産が落ち込んできています。日本の農業技術や加工技術はとても高く、海外にも誇れるものなのに残念です。生産者だけではなく消費者の私たちも、日本の食材に自信や誇りを持ってもらいたいです」。日本の食材の味わいや奥深さを知る楽しさ、自分なりのこだわりをもつ嬉しさ。多種多様な料理を食べられることが当たり前になった私たちは、いつの間にか食材そのものを味わう喜びを忘れてしまっているのかもしれません。実際に堀田さんが銘柄米の食べ比べを開催したときには、参加者から「おかずなしでお米だけで、こんなにおいしいなんて! それに銘柄によっても味が全然違う」と驚きの声があがったそうです。

私の食と世界の食

食育施設のスタッフとして働きながら、プライベートでも日本の食を広める活動をしている堀田さん。このような経験を通して日本にある身近な食材を見つめなおしたことが、世界の食の問題にも目を向けるきっかけになったと話します。「日本人が食について考えるとき、世界で起こっている飢餓や、遠く離れたお腹をすかせている子どもたちのことを思い浮かべる人は少ないと思います。私自身も、じっくりと一つひとつの食材を味わい楽しむことから、逆にその食材がどこで生産されたものなのか、世界とどうつながっているのかを考えるようになりました。なので、まずは身近な食材がどこから来ているのか考えてもらうことが、世界の食問題に目を向けてもらうための第一歩になると思っています」。 大学時代には遠いと感じ、自分にできることはないとあきらめてしまった世界の問題が、自分の“食”を見つめ直すことによって、グッと近くなったと語る堀田さん。今は、食育を通して、地球上の限られた食料を共に分かち合って生きている世界の人たちにも、目を向けられると確信しています。

私たちの食生活を今すぐに変えることは難しいかもしれません。けれど、まずは身の回りの食材一つを手にとり、関心を持ち、疑問を投げかけることから、世界とのつながりを見つめることはできるでしょう。日本と世界の食問題。日本の食と世界の食。自分の問題として考えられるような体験を積み重ねること、楽しみながら前向きに取り組むことなど、問題の解決に向けて共通していることはたくさんあるようです。

プロフィール

1979年生まれ。千葉県我孫子育ち。東京の大学を卒業後、宮城県綾町の自然生態系農業を行なう農家で半年間ボランティア。3年間の会社員生活を経て、「ごはんミュージアム」施設スタッフに転職。仕事のかたわら、日本の身近な食材のおいしさを広める活動を行う。

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