「食」の問題の解決に向けて、みんなでアクションする1ヵ月。
「世界食料デー」月間2017 10/1-31

団体 FOOD ACTION NIPPON事務局長
芳野忠司さん

vol.04インタビュー

50年前までは70%以上あった日本の食料自給率。今は41%にまで下がり、主要先進国のなかで最低水準になっています。そんな中、2015年までに食料自給率を45%にすることを目指して農林水産省と民間の企業・団体が始めた「FOOD ACTION NIPPON」。その事務局長として、食料自給率の向上に取り組んでいる芳野さんにお話を伺いました。

食料自給率を上げることで変わること

国産の食材を選ぶことや食べることの大切さを伝えながら、食料自給率を上げることを目指している「FOOD ACTION NIPPON」。地球規模で深刻化している食料問題と私たちの食との関わりを新たに考えるために政府が開催した「食料の未来を描く戦略会議」をきっかけに立ち上がりました。海外から食料を大量に輸入することで成り立っている私たちの食生活は、世界の流れが変わることによっていつ不安定になるかわかりません。また、食べものをつくるために使われる水や土地など海外の貴重な資源にも頼っていることになります。さらに、遠くから運ばれてくる分だけ石油などのエネルギーが多くかかり、地球環境にも負担をかけてしまいます。「どこで作られたどんな物かを気にせずに、とにかく安いものを私たち消費者が選び始めると、商品を売る側も、生産者や生産工程はさておき、少しでも安いものを店頭に置こうとします。飲食店であれば、少しでもコストを下げて安い値段で食事を提供しようと、安い食材を選ぶようになります。私たち消費者が、多少費用がかかっても、できるだけ国産のものを選ぶことは、地球にも優しい選択になります」と芳野さん。

消費者の選択が変えるもの

食品の産地偽装など、食にまつわる暗いニュースが飛び交う中で一見弱い立場にあるように見える私たち消費者。でも、最近では消費者が食の安全について敏感になったことで、スーパーマーケットなどの野菜売り場には、国産の野菜や生産者のわかる野菜がたくさん並べられるようになっていると芳野さんは指摘します。こうした変化は店頭の野菜売り場だけではありません。「例えば、以前は旅館で食事をすると、食べきれないほどの品数の料理が出されることがよくありましたよね。でも、ただたくさんの量の料理を提供すればお客さんが満足してくれるという時代はもう終わったのではないでしょうか。その土地の素材を生かした料理を少しだけ食べたい、食べ切れる量の料理だけを出してもらってできるだけ残さない、というように消費者の意識も変わってきていると思います。そういった消費者の食に対する意識の高まりは、商品を売る側の意識を変える力をもっていると思います」。

食べる量を減らすのではなく、毎日の食事を大切にする

日本の食を変える力をもつ消費者の選択。私たちには、自分が選んだ食事に使われている食材がどこから来て、どんな人が作ってくれたのか、今以上に考える責任があるのかもしれません。「食の問題は環境問題とは違います。今までつけっぱなしにしていた電気をこまめに消したりするように、消費する量を減らせば解決に向かうというものではありません。健康に生きていくためには一日三食きちんと食べることが必要なので、食べる量を減らすわけにはいかないのです。一方で、私たちの食生活は昔と比べて豊かになったといわれていますが、本当でしょうか。確かに食材の種類は豊かになったかもしれません。でも、それは自分の体や日本の食の未来、生産者や地球にも優しい食生活といえるでしょうか」。芳野さんは、国産の食材や旬のものにこだわった学校給食を提供しようと奮闘している先生や栄養士が増えてきているものの、食事をとる場所は学校だけではないと話します。「家で家族と一緒に食べたり、お店で友人と一緒に食べたりとさまざまです。なので、子どもを持つ親も、いずれ親になるOLやサラリーマンも、日本に暮らす誰もが毎日の食事を大切にし、それが自分の体だけではなく、国内外の生産者の暮らしや地球環境にもつながっていることを知ってほしいと思っています」。

私たちにできること

「FOOD ACTION NIPPON」では、食料自給率を上げるために私たちにできることとして旬の食べ物を選ぶこと、地元で取れる食材を選ぶこと、ごはん中心のバランスの良い食事を心がけること、食べ残しを減らすこと、自給率を上げるための取り組みを応援することの5つを掲げていますが、芳野さんが私たちにできることとして提案してくれたことはもっとシンプルです。「私たちにできることで何よりも簡単なことは全部食べることだと思います。自分に見合った量だけを買って食べる。少しずつでもいいので、自分の食生活を変えていくことが大切だと思います」。

私たち消費者の選択は、日本の食に関わる世界中の多くの人たちの選択を変える力をもっています。また、私たちが毎日何気なく口にしている食事は、日本だけではなく地球の未来にもつながっています。開発途上国にも日本と同じように、食生活の変化を受けて食料自給率が下がっている国があります。日本ではお金があるため、食べ物を輸入することで食料をまかなうことができます。しかし、開発途上国が食料を輸入に頼るようになるとお金がないためその確保が難しく、食料の供給が不安定なものになってしまいます。日本は食料自給率を上げる経験を海外に伝えていくことでも、世界に貢献していくことができるのではないでしょうか。

プロフィール

1970年生まれ。埼玉県出身。日本大学生産工学部卒業後、JTBに入社。JTB首都圏・首都圏交流事業推進室室長として、旅館・ホテルを始めとする地域のネットワークを活かした新規事業開発を担当した後、2008年10月にFOOD ACTION NIPPON事務局創設において事務局長として就任。

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