「食」の問題の解決に向けて、みんなでアクションする1ヵ月。
「世界食料デー」月間2017 10/1-31

国際機関 FAO日本事務所副代表
国安法夫さん

vol.05インタビュー

10月14日に国際連合食糧農業機関(FAO)と国連世界食糧計画(WFP)が共同刊行した年次報告書「世界の食料不安の現状」において、2009年が終わるまでに、世界の飢餓人口は史上最高の10億2000万人に達すると報告されました。世界で飢餓に苦しむ人々の栄養状態と生活水準を改善し、すべての人々が健康な生活を送ることができる世界を目指している国連食糧農業機関(FAO)。コラム最終回に、 FAO日本事務所副代表の国安さんにお話を伺いました。

なぜ地球規模で取り組むのか

飢餓の問題は、日本を始めとする先進国に住む私たちには一見無関係のようにも思えてしまいます。ではなぜ、この問題に世界中で取り組んでいかなければならないのでしょうか。「世界の国々を見渡してみると、食料が十分にある国と十分にない国に分かれています。十分にある国では食料が大量に捨てられたり、飽食の問題を抱えている一方で、食料が十分にない国は飢餓に直面しています。なぜそれらの国で食料が足りなくなってしまうのか考えてみると、多くの人が貧困に直面していたり、内紛が起こっているために政府が機能していなかったりと、国内で多くの問題を抱えていることが挙げられます。でも、それだけではありません。環境問題の悪化によって今までは採れていた食料が十分に収穫できなくなってしまったり、平等に利益が得られないような貿易のルールがあったりと、その国に住む人々ではどうにもならないような地球規模での問題も大きく影響しています。これらは開発途上国の人々だけが解決に向けて頑張ればどうにかなる問題ではありません。食料が十分にある国に住む人々も、自分たちに何ができるのか考えて行動し、解決に向けて取り組んでいく必要があります」。

世界につながる日本人の食卓

食料が十分にある国、日本。自分や家族が食べるものには関心が高い私たちですが、食品の産地や生産過程だけではなく、その先にあるものにも目を向ける必要があると国安さんは話します。「ここ2~3年で日本の消費者の食に対する意識は確実に変わってきています。でも、食べ物がどんな状況の国のどんな人たちによって作られているのかまでは知らない人がほとんどでしょう。こうした情報について、今まで以上に伝えていく必要があるのではないでしょうか。私たちの食卓の向こう側には十分に食べられない人々の現実があるということを知ってもらう必要があると思います」。

食の問題を解決するために

世界に目を向けてみると、6人に1人が飢餓に苦しんでいる現実があります。また、その現実は一昨年から昨年にかけて起こった食料価格の高騰や長引く世界的な経済不況によって、より深刻なものになっています。家計に占める食費の割合が6~8割にもなる開発途上国に住む人々は、その影響を一番に受けています。「数字にしてしまうと数が大きすぎて伝わりにくいですが、飢餓に苦しむ10億人には私たちと同じように家族がいて、それぞれの生活があります。その人たち一人ひとりの顔が見えるようなストーリーを伝えていくことで、今世界が抱えている現実をより身近に感じてもらうことができたらと思っています」。

この深刻な問題に立ち向かうために、私たちには何ができるのでしょうか。「世界の飢餓問題を解決するためには、一人ひとりが考え行動することが大切だと思います。そのためにはまず2つのことを知って欲しい。一つは世界の状況です。日本にいても情報がたくさん得られる時代になりましたが、若い人たちにはぜひ自分の目で世界を見てきてもらいたいです。そしてもう一つは、その状況を解決しようと活動している人たちのことです。FAOのような国連機関だけではなく、NGOや政府機関など、たくさんの人たちが飢餓をなくすために奮闘しています。国内外で活躍する人たちと直接会って話をすることで、世界の問題を身近に感じ、自分のこととして捉えられる人がもっと増えたら」と国安さん。

食べ物が足りないことで課題に直面している人々と、食べ物がありすぎることで課題に直面している人々。その架け橋になるのは問題の解決に向けて活動している“人”なのかもしれません。いずれの問題も、頭を抱えて考え込むのではなく、解決に向けて具体的な一歩を踏み出すことで、世界の食と日本の食をより良いものに変えていけるのではないでしょうか。

プロフィール

1954年生まれ。長野県出身。北海道大学農学部卒業後、農林水産省に入省。かんがい技術者として、地方勤務を含め日本国内で農業・農村の振興に従事する一方、バンコクでのメコン川水利用調整委員会事務局、ローマでのFAO本部技術協力局勤務を経て、2005年11月からFAO日本事務所において副代表として勤務。

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