vol.51イベントレポート
主催:「世界食料デー」月間2020
日時:2020年10月9日(金)19:00~20:00
場所:Zoomウェビナー
10月16日の世界食料デーにあわせて毎年開催している“WORLD FOOD NIGHT”。10月2日に開催された第1回に続き、第2回「栄養不良の解消に向けて」が10月9日に行われ、今回は163名の方にご参加いただきました。
まず、国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所の田村萌々花が世界食料デーの意義と第2回のテーマである栄養不良に関する世界の状況について解説しました。慢性的な栄養不足である飢餓の状態にある「飢餓人口」は、自然災害や経済危機などの理由により過去5年間増加しています。また、栄養のバランスがとれた食事には、カロリーでお腹を満たすだけの食事の5倍の費用がかかり、経済的な理由で栄養価の高い食事にアクセスできない人の数は世界で推定30億人に上っています。栄養不良の解消は、人権という点でも、また持続可能な開発目標(SDGs)達成という観点からも重要であり、私たち一人ひとりが気づき、協力して取り組む必要があると指摘しました。 (文責:「世界食料デー」月間事務局2020)
こども食堂とともにSDGsゴールを
国内外で栄養不良の課題解決に向けた活動に携わる3名のスピーカーをお招きし、これまでの取り組みの紹介や想いを共有いただきました。
まず初めに、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長の湯浅誠さんからこども食堂の取り組みを中心にお話いただきました。「こども食堂とは、“食べられない子が行くところ”ではないですよ」とおっしゃる湯浅さんは、むしろ色々な人が立ち寄ることで様々な背景を持つ子どもたちも安心して来ることができる場所になると言います。子どもからお年寄りまで、互いを知り、交流し、つながり続けるための多世代交流の場がこども食堂であり、食を通して子どもたちに豊かな体験をしてほしいと願う人々に支えられていることを実例も交えてご紹介いただきました。また、平時だけでなく、非常時にもこども食堂を介して企業や行政、地域が連携することで、セーフティーネットの役割を果たすことが期待できます。今後は「交通安全の見守りのように、こども食堂が日本全国に当たり前にある風景」を目指していきたいと語ってくださいました。
食料提供の場から、居場所、そして、お互いに支え合える場所へ
続いて、食支援ネットかながわ代表の栗城昭司さんからは、フードパントリー(食品無料配布)・フードドライブ(食品を集める)の活動についてお話いただきました。同団体では食品を渡すだけではなく、次の支援につながる場所と環境を作ろうと、放課後等デイサービスや施設への食品支援、地域の生活協同組合パルシステム神奈川と連携した活動なども行っています。今年の7月には新型コロナウイルス感染症対策で厳しい状況下におかれた方々の支援も開始しました。また、企業と連携した寄贈食品の配布、炊き出しでの他団体との連携、食品ロスに関するイベントでのブース出展など、その時々の地域のニーズに合わせた多様な活動を、他団体と連携を広げながら展開している様子を写真とともにお伝えいただきました。
バングラデシュにおける女性のエンパワメントを通した食料安全保障事業について
最後のスピーカーは特定非営利活動法人ハンガー・フリー・ワールド海外事業担当の寺尾美菜子さんでした。同団体は「飢餓のない世界をつくる」を目標にアジア・アフリカの海外4ヵ国で事業を展開する国際協力NGOです。そのうち、バングラデシュで実施している栄養改善プロジェクトについてご紹介いただきました。このプロジェクトでは女性たちに栄養の知識や離乳食のレシピを教える活動、家庭菜園の普及、そして、活動地においてプロジェクトの推進を担う村の女性たちへの研修などをおこなっています。コロナ禍での緊急食料支援の際にはロックダウンで移動が制限された首都勤務のスタッフに代わり、プロジェクトの推進役の女性たちが中心的な役割を果たしたそうです。また女性たちがプロジェクトの枠を超えて積極的に自らの村の課題解決に取り組んだ例などもご紹介くださいました。
パネルディスカッションでは、スピーカーの御三方から参加者の方々へ向けて、すぐにできる身近な行動のヒントやメッセージをいただいたほか、スピーカーの間でも意見交換が行われました。また、参加者から寄せられたいくつかの質問にもご回答いただきました。