vol.57イベントレポート
主催「世界食料デー」月間2022
日時:2022年7月22日~9月30日
場所:オンライン
今年はじめての取り組みとして、高校生にユース記者として食料問題についての取材を行い、記事にまとめてもらう「ユース記者プロジェクト」を実施しました。7月22日のオリエンテーションを皮切りに、「地域の食と、世界の食のつながり」をテーマに、地元で各自の課題意識に沿って取材を行い、独自の記事としてまとめました。
プロジェクトに参加した3校のうち、現在までに提出された2校分の記事を紹介します。また、各記事に対して国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所から寄せられたコメントも掲載しています。
※個人情報保護の観点からユース記者である高校生の氏名は伏せています。
高知商業高校
「日本から変えていく食品ロス」 記事はこちらから
「はじめは話を聞きにいく「だけ」の活動予定でしたが、子ども食堂の手伝いもさせていただくことができました。世界の飢餓と何の関係があるのだろうと思っていました。しかし、出来上がったご飯を渡していく中で、見えてきたものがありました。それは「表面だけでは何もわからない」という事です。今は、食べ物に困っている人もちゃんと身なりを整えています。だからこそ「判断すること」が難しいのです。飢餓について調べる前は、ご飯を食べることが困難なだけと思っていました。しかし、調べていくことで明らかになっていく原因と現状。「飢餓」という言葉からは分からない真実が見えてきたのです。言葉を知ることは簡単ですが、その言葉や出来事を知ることが何よりも難しいのだと私は思いました。」(感想から抜粋)
▶︎記事へのコメント(国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 日比絵里子所長より) 食料ロス・廃棄について、現状の制度から現場の実態まで様々な観点からまとめられていて、とても興味深く読ませていただきました。また、調べ学習にとどまるだけではなく、実際に行動を起こされた点が素晴らしいと思います。食料ロス・廃棄、フードバンク、世界の飢餓問題の関連は複雑で、実は私も説明に苦労します。そこを無理につなげず、疑問点も残しながら報告なさったのも好感を持てました。わたしたちが普段食べているものがどこから来ているのか、という点に着目すると、より世界とのつながりが見えてくるかもしれません。
「JA新聞」 記事はこちらから
「農林水産省が発表しているフードロスの推計値は年間612万トンあり、収穫量が1,334万トンに対し、実際に出荷されたのは1,141万トンである。出荷されなかった農作物の一部は自家用として消費に回されているが多くは規格外、過剰分として廃棄され「隠れフードロス」となっている。」(知ってる?フードロスの現状から抜粋)
▶︎記事へのコメント(国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 日比絵里子所長より) 生産段階での食料ロスに注目された着眼点が素晴らしいと思います。これって意外に知られていないんですよ。実はしっかりとした統計もないんです。JA高知の取り組みについても、大変勉強になりました。 隠れフードロスについて、生産者の力に頼るだけではなく、生産者の手を離れた先にある流通・卸売・消費などのそれぞれの段階から働きかけられることがあるといいですね。生産から小売の前段階までに起こる食料ロスは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の 指標12.3.1.a にも設定されています。 フェアトレード商品と高知県内の「わけあり」食材を使用した商品づくりの今後の活動も、楽しみにしております。
「こうち生協取材新聞」 記事はこちらから
「実はすぐ近くにSDGsの取り組みがありました。また多くの方々がこれらの活動に力を入れているということが取材を通して分かりました。このユース取材活動は違った視点から様々な事を学べ、有意義な時間でした。そして、今、私は「国際コース」に在籍し、途上国の現状などを学んでいます。ひとりの力で世界は変えられないと思っていました。しかし、まずは食べ残しをしない、使っていない電気を消すなど、小さな事を続けていくことが世界を変える一歩になると考えます。」(感想から抜粋)
▶︎記事へのコメント(国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 日比絵里子所長より) 実際にこうち生活協同組合へ取材に行かれ、その内容を記事にまとめておられ、興味深く読ませていただきました。また、すぐ近くにSDGsの取り組みがあり、私たちにもできることがあるという点に大変共感いたしました。 私たちの普段の生活は海外の国と密接につながっています。私たちが排出する温室効果ガスは、気候変動につながり、世界中の人々の生活に影響します。私たちが普段食べるものの6割(カロリーベース)が、海外の資源を利用して生産され日本に輸入されているともいわれます。また国内で生産していても、輸入した肥料やエネルギーに依存している場合が多いです。そのなかで、地元で循環型農業をつくる努力というのはますます重要になってきています。身近な課題から海外とのつながりも考えられるようにすると、更に視野が広がるかもしれません。今後も探求を続けてくださいね。
高知国際高校
「地域の食と、世界の食のつながり」レポート-貧困や飢餓の解決策になりえる手段・フェアトレード商品について- 記事はこちらから
「インターネットでフェアトレードを広める活動をしている方にさらに連絡をとろうとしましたが、先行研究などで知った多くの店舗や営業者の方は閉店し活動や営業を停止していました。認知度の低さやどうしても値段が高くなってしまうことに加えて、特に食品を扱うことが多いことを考えると、新型コロナウイルス感染拡大の影響の大きさを感じずにはいられません。これから先、現在も活動している団体や方法・地域の様子が分かれば、持続可能な支援方法が分かるかもしれません。それと同時に貧困や飢餓の解決策になりえる活動というものの難しさもまた痛感しました。」(「私たちのこれから」から抜粋)
▶︎記事へのコメント(国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所 日比絵里子所長より) 私たちの普段の消費行動が、知らないうちに貧困や飢餓に寄与していることがあることをわかりやすく取り上げていらっしゃることがいいですね。特に私たちが依存している現代の農業・食料システムのもとでは、私たちがはかり知れないはるか遠い土地で生産や加工されたものが、はるばる日本にやってくることもありますから、環境や人権、貧困への影響など想像を超える場合がほとんです。また、新型コロナウイルス感染拡大が貧困や飢餓に与える影響も考えさせられます。認証制度というのもあります。実際に活動をしている人の話を聞いてみたり、自分たちでも調査を進め、行動することにより、新たな発見があるかもしれません。