vol.10イベントレポート
主催:緑のサヘル
日時:2011年8月25日(木)14:00~15:30
場所:JICA地球ひろば
今回のセミナーでは、緑のサヘルが協力しているゼロ・ハンガー・ネットワーク・ジャパンによるブルキナファソでの取り組みについて紹介することを通じて、「食料問題とは何か」について考えました。(文責:緑のサヘル)
ブルキナファソの食料自給率の実態
ゼロ・ハンガー・ネットワーク・ジャパンは、世界から飢えと栄養不足をなくすことを目的に、日本のNGO/NPOや民間企業、法人団体、国際機関などが力を合わせ、情報発信と具体的な行動を起こすためのネットワークとして、今年設立されました。設立後、初めてとなる海外協力活動として、ブルキナファソのネットワーク「ブルキナファソ飢餓対策連盟(以下、ACF)」が行なっている「食料問題の改善」に協力しています。緑のサヘルは、ゼロ・ハンガー・ネットワーク・ジャパンの参加団体として、現地での調整を担当しています。
この協力活動では、食料の安全保障に関する現地の方々の意識を喚起すると共に、取り組みの強化や活性化を図ることを目的にしています。具体的には、ACFのネットワークを経由して、参加団体であるブアヤバ、ペングウェンデ、テールターバの3団体によって取り組まれている、農作物の生産性の向上や、現金収入の増加を目的とした野菜栽培プロジェクトの支援につながっています。各団体の取り組みに関する進捗状況について、報告を行ないました。
これらを踏まえた上で、彼らの活動がどのように食料問題の改善あるいは「食の安全保障(フード・セキュリティ)」につながっているのかを掘り下げて考えていきました。ブルキナファソの食料自給率は、国レベルで見た場合、121%(※)とされており、数字上でみた限りでは充分賄われているように思えます。しかし、自給率とは、「消費量がどれだけ国内で『生産』できているか」を示しているに過ぎず、消費の実態を反映しているわけではありません。
「食料問題」は「生活問題」
生産された農作物は「商品」として販売され、「流通」を通じて他の地域に運ばれ、市場や商店での「販売」を通じて食卓へ届いています。これらの過程には、「現金」が関与しています。つまり、「現金」がなければ、「消費」には至らないことになります。したがって、「食料問題」は、「経済問題」の側面を持っていることになります。このような状況は、都市だけではなく、地方においても共通しています。農産物を生産している方々も、「食料品」を購入しています。なぜならば、食事を用意するためには、食用油や塩、調味料などが必要になるからです。この意味において、「食料問題」は、「食べることの問題」と言い換えることができます。
ブルキナファソで3団体によって取り組まれている野菜栽培は、販売を目的にしています。これだけでは、必ずしも「食料問題」の解決に直結していないかのように思えます。しかし、食べるためには現金が必要であることに留意すれば、現金収入は彼らの生活を成り立たせる上で必要不可欠なものだとわかります。つまり、彼らは「食料問題」を「生活問題」として捉え、その解決のために活動に取り組んでいるといえます。
なお、当日は、学生や会社員、主婦、教育関係者など10代から60代までの幅広い世代の方々が集まり、参加者からは、以下のようなコメントが寄せられました。「ネットワーク同士の取り組みを通してのブルキナファソについて、ということで新鮮でした」「食料問題が、ただ単に生産の不足の問題というのではなく、畑から消費にいたるまでに物流・販売があり、経済の流れに組み込まれているという視点が大切だと思った」「食料問題を単に自給率等の数値によってだけではなく、生活感を伴った理解を通じて捉えることが必要だということに納得しました」。
(※)参照:ブルキナファソ農業水利省「穀物に関する食料自給率」2009/2010年