「食」の問題の解決に向けて、みんなでアクションする1ヵ月。
「世界食料デー」月間2023 10/1-31

世界の食料問題と日本のつながりを一緒に考えよう!
フードシステム改革推進チーム 中間発表会

vol.66イベントレポート

主催:ハンガー・フリー・ワールド
日時:2022年10月29日(土)19:00~20:30
会場:zoom

飢餓のない世界を実現するためにも、まず日本の食の仕組み(フードシステム)を変えたい。そんな思いから、ハンガー・フリー・ワールドでは、2022年5月に「フードシステム改革推進チーム」を発足させました。ボランティアメンバーは、さまざまな形で食やSDGsに関わってきた学生・社会人です。
今回、チームの中の4つのグループが「日本の食」と「世界の飢餓」の繋がりを示す仮説を発表。また、今後この仮説に基づいてどのように日本の食を変えるべきか、案を示しつつ、12名の参加者とともに考えました。(文責:ハンガー・フリー・ワールド)

①輸入品目ごとの廃棄

まず初めに、「輸入品目ごとの廃棄」グループがこれまでの進捗を発表しました。フードロスは小売店での売れ残りや消費者の食べ残しが注目されがちですが、食料の大半を輸入に頼る日本では、輸入時に発生するフードロスも見逃せない問題です。

このグループは、特に輸入時の検疫により廃棄されている食品があることに着目し、その量や品目を調査。途上国から輸入されたカカオなどの産品も、農薬残留などの理由で一定数廃棄されていることを指摘しました。そして、カカオの輸出国は飢餓人口が多い国とも重なることから、今後の飢餓解決のためのアクションとして、フェアトレードの推進による現地農民の収入向上を図ることを提案。フェアトレード認証は労働者の権利だけでなく、低農薬であることも条件になることから、フェアトレードの推進が農薬残留による廃棄の削減にもつながると訴えました。

②産品ごとの環境負荷

「産品ごとの環境負荷」グループは、日本の食と世界の飢餓のつながりを示すうえで、温室効果ガスの排出量に着目しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のレポートでは、人間の活動によって排出される温室効果ガスのうち、最大37%が農業をはじめとするフードシステムによるものとされています。同レポートは、気候変動の影響を抽出するモデルで分析すると、穀物の平均収量が産業革命前と比べて下がっていることも指摘しています。2022年に東アフリカで干ばつによる深刻な飢餓が発生したことも、飢餓の背景に気候変動があることを端的に物語っていると言えるでしょう。つまり、私たちの食は気候変動をもたらし、気候変動は世界に飢餓をもたらしています。

このように私たちの食と世界の飢餓の関連性を示したうえで、「産品ごとの環境負荷」グループは、飢餓を解決するためのアクションとして、消費者が意識的に食品を選ぶことを提案。たとえば同じタンパク源でも、牛肉と豆腐を比較すると1kg生産するために排出される温室効果ガスの量が約31倍異なる※1など、データを示しながら以下のような4段階の食品の選び方を提案しました。

  1. 動物性食品を植物性食品で置き換えられる場合は、置き換える
  2. 動物性食品・植物性食品それぞれの中でも、より温室効果ガス排出量の少ないものを選ぶ(例:牛肉→鶏肉、コメ→ジャガイモ)
  3. 同じ食品でも、より環境負荷の小さい生産方法のものを選ぶ(例:アマゾンを切り開いて作られた大豆 を避け、国産のものを選ぶ)
  4. より近くで生産された食品を選ぶ

③消費段階での廃棄

「産品ごとの環境負荷」グループが指摘した食料の生産・流通だけでなく、食料の廃棄も、気候変動と食の関係を考えるうえで重要なトピックです。実際にフードロスは、世界の温室効果ガス排出量の8~10%の原因になっていると言われています※2

そこで「消費段階での廃棄」グループは、食料の廃棄を減らすために、どのようなアクションが必要かを検討しました。特にこのグループが注目したのは、小売店と飲食店における食品ロス。店舗や食品企業など事業者による食品ロスは、日本の食品ロスの53%を占め、家庭での食品ロスを上回っています※3

まず小売店に関しては、ロスの背景にいくつかの商慣習があることを指摘しました。たとえば、製造日から賞味期限までの期間を3等分し、最初の3分の1を納品期限、次の3分の1を販売期限とする「3分の1ルール」は、納品・販売が間に合わなかった食品を廃棄する背景になっています。そこで、日本の食を変えるために考えられるアイデアとして、新しいルールの法制化などを訴えました。

次に飲食店に関しては、利用客による食べ残しがロスの主な原因になっていることを説明。食べ残しを減らすためのアイデアとして、料理を持ち帰るための「ドギーバッグ」を紹介しました。スコットランドでドギーバックにより平均24.3%の食べ残しの削減が実現した※4例や、日本で1年以内に外食での食べ残し経験があると回答した人のうち67.8%が持ち帰りの意向を示している※5というデータを紹介し、日本でも飲食店によるドギーバッグ導入が有効と結論付けました。

④畜産による資源消費の増加

最後の「畜産による資源消費の増加」グループは、肉や乳製品の生産のために大量の穀物や水が消費されていることを指摘しました。「産品ごとの環境負荷」グループがこのような資源集約型の畜産による気候変動への影響を示した一方で、「畜産による資源消費の増加」グループは経済に着目。畜産による穀物や水の大量消費は、気候変動だけでなく、穀物価格の高騰を誘発することでも世界の飢餓の原因となっているのでは、と仮説を提示しました。

仮説を立証するため、このグループではさまざまなデータを調査。たとえば、牛肉1kgの生産のために11kgのトウモロコシが必要というデータ※6等から、日本人が食べる肉や乳製品のために世界のトウモロコシの4.9%が使われていると試算し、畜産による影響の大きさを訴えました。一方で、穀物価格の変動は、バイオ燃料や人口増加など畜産以外の需要を増減させる要因、同様に供給を増減させる要因、さらには投機などの要因が複雑に絡み合うため、畜産のみによる影響の数値化が困難です。そのため、肉や乳製品の消費が穀物価格の変動を通じて世界の飢餓に影響を与えていることは、推測はできても、実証することに課題があると現状を共有しました。

参加者からのコメント

  • 社会変革を導くコミュニティ・オーガナイジングの教えの一つの中で、行動を促す要因として、「緊急性」や「危機意識」というものがあります。欧米圏における菜食の広がりは気候変動の危機的状況に関する認識の高まりが背景にあるように思います。一方で、日本社会において、問題意識を高めるためのコミュニケーションをどのようにして広めるのかが大きな課題のように思われます。
  • 各グループの調査を俯瞰して、再考する機会があればと思いました。様々な視点を敢えて自由に論じてみるなど、それぞれが当事者として考えていくことを、ひとつひとつ実施していくことなど、一人ひとりのアクションとしていく為にできることを私も考えていかなければと強く感じました。
  • どのグループの発表や問いの立て方も、データに基づいたもので非常に興味深かったです。これは自分自身も考えているテーマなのですが、「じゃあどう行動するか」のアクションフェーズになると、「日々の行動を見直そう!」など抽象的かつトラッキングが難しい(行動変容が図れない)ものになる印象です。例えば特定のコミュニティ(ある大学のゼミなど)に絞って、何をしたり、何を言えば、どんな行動変容があるのか、少し長い時間軸で調査しても面白いかなと思いました。

フードシステム改革推進チームでは、来年以降、これまで調べてきた日本の食と世界の飢餓のつながりを分かりやすく示し、日本の食から世界の飢餓を解決するためのアクションを具体的に検討していきます。

  1. Poore, J., & Nemecek, T. (2018)
  2. Mbow et al.(2019)
  3. 農林水産省(2022)
  4. ドギーバッグ普及委員会(2018)
  5. 株式会社リクルートライフスタイル(2018)
  6. 農林水産省(2003)

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