「食」の問題の解決に向けて、みんなでアクションする1ヵ月。
「世界食料デー」月間2021 10/1-31

タベモノガタリ株式会社
竹下友里絵さん

vol.38インタビュー

<プロフィール>
1996年兵庫県生まれ。大学2年まで関西学院大学総合政策学部にて国際協力を学び、3年次に神戸大学農学部に編入し2年間農業や食について学ぶ。高校2年生のときに1年間行ったカナダ留学で、ホームステイ先の食べ残しの多さを目の当たりにし、「世界の一方ではこんなに食べ物が捨てられているのに、世界のもう一方では食べ物を得られずに死んでいる人がいる」という食のアンバランスに問題意識を持ち始める。
2019年にタベモノガタリ株式会社を創業。現在は規格外野菜のフードロス問題解決のために八百屋のタケシタを運営している。

タベモノガタリ株式会社 社長の竹下さんに2021年10月15日開催の「World Food Night 2021 ~食を未来につなぐユースの視点と力~」で発表いただいた内容をまとめました。

留学先のカナダで目のあたりにした大量のフードロスが食に興味を持つきっかけに

「八百屋のタケシタ」を兵庫県神戸市を中心に運営しております。冒頭のクイズの中にもあったと思いますが、私は生産の段階のフードロス問題に取り組もうと思ってこの八百屋を3年前に始めました。今日は10分間という限られた時間なので、私の簡単な自己紹介と、「規格外野菜って実際こんなんだよ」という生の声というか、リアルな情報をお伝えしていければと思っております。

私は地元も出身も兵庫で、ずっと地元の高校に通っていました。中学校のときは英語の授業がとても好きで、英語の教科書を隅々まで読む変わった学生だったんです。英語の教科書に貧困問題とか、国際協力とか、国連、JICAなどを扱ったテーマを見つけ、将来国際協力に携わりたいと思うようになりました。そのためには英語を勉強しなければ、と漠然と感じ始めたのが高校のときでした。そして1年間カナダに留学しました。 留学しているときはカナダ人の家族たちと過ごしました。晩御飯を一緒に食べると、結構彼らは簡単にご飯を捨てていました。たしかにご飯はあまりおいしくなかったです。ゆでたパスタに粉チーズをかけただけとかだったので、ミートソースも欲しいなと思いながら食べていました。私は母親から「米粒ひとつも残さず食べるんだよ」と教わってきたので、食の価値観のギャップというものを感じました。でも、これはカナダだから捨てているのかと思って調べてみたところ、日本でもめちゃくちゃたくさんの食べ物を捨てている。年間約600万トンのフードロス、まだ食べられるのに捨てられている。もったいない精神を持っている日本なのに、こんなに捨てているのか! ということを目の当たりにしました。多くの人が食べ物に困って生活している一方で、これだけの食べ物が捨てられているのはすごくおかしい、矛盾というか、アンバランスじゃないか、おかしいよね、と感じはじめたのが食に興味をもったきっかけでした。

高校を卒業した後、関西にある関西学院大学の総合政策学部というところで国際協力を勉強していましたが、もっと食に特化して勉強したいなと神戸大学農学部へ3年生から編入学しました。休学してビジネスのことを勉強したりしながら、復学し、自分でなんかやってみたいなと思って、卒業と同時くらいにタベモノガタリ株式会社を創業しました。で、今の八百屋のタケシタという事業をやっております。

野菜の規格の背景には、消費者に安く届けるための流通側の努力が

私がテーマにしているのが規格外野菜です。今日参加されている方はほとんど聞いたことがあるんじゃないかなと思います。実はリアルな統計がちゃんと出ていなくて、私が産地訪問しながら農家に「どのくらい捨てているの」という質問をすると、だいたい作っている野菜のうちの3割ぐらい規格外ですよ、という感じがあります。さっきデータがないと言ったんですが、厳密には農水省が出しているデータで、一年間に収穫した野菜の量と出荷・販売した野菜の量を出したものがあり、2019年のデータでは50万トンぐらいの差異があるというのがわかっています。収穫したのに、出荷していない量が50万トン。この50万トンのなかには、農家さんが自分の家で消費する分や、家畜の飼料として販売された分は含まれていないので、厳密には産地廃棄の量そのものではないのですけど、それぐらいの量が捨てられているのではないかと思います。

ここ最近メディアで規格外野菜を目にするようになりました。メディアでは、トマトのひび割れや二股の大根やニンジンなど、いかにも「ちょっとどうなん?」という野菜が多いかなと思うんです。これ(上中央のスライド)は有機かつ無農薬で育てたパプリカの虫食い。上だけとったらおいしいんですけど今の流通だったら出せない。規格外というと、こういうわかりやすい虫食いだったりとか、曲がったキュウリとかが多いとイメージをされます。

しかし実際には、これ(右上のスライド)は梨で表面に黒い点が六つあるのは黒星という病気ですが、普通に皮をむいたら何の問題もない。梨の規格って、この黒星が5個未満はOKで、5個以上はアウトなんです。この写真の梨には6個あるので規格外で廃棄される。これほど厳しいものなんですね。写真(左下のスライド)のブロッコリーは直径20㎝ぐらいあって大きいですが、規格は直径15㎝未満。上から見てまん丸かどうかが規格になっていたりします。大きいけど大味ではなく、おいしいんですけどね。兵庫県北部の規格では、ズッキーニは180グラム未満、傷があるかどうか見栄えは関係なくてグラムで決められています。写真(下中央のスライド)の右3本は200グラム以上あって出荷できないので、廃棄されます。

「なんで規格が存在しているのか」と思われると思いますが、私は最初、「規格外なんてもったいない」と思って、「なんでも出したらええやん」って思っていたんですけど、実際紐解いていくと、規格も必要だというのがよくわかってきました。いろんな理由があるんですが、一番は「効率的な流通を実現していこう」というのが目的です。 ぜひイメージしてほしいんですけど、みなさんの目の前に段ボール1箱があったとして、山積みのキュウリをこの段ボール1箱に、「めちゃくちゃ効率的に入れてくれ」と言われたら、みなさんきっとまっすぐなキュウリばっかりを入れると思うんですね。誰も曲がったキュウリを入れない。なぜならデッドスペースができちゃったりしてうまく入らないから。効率が悪いから選ばないと思うんですけど、これがまさに規格が生まれた背景です。

卸売市場とかに通っている八百屋さんって全然利益がない。玉ねぎ10キロって段ボール1箱ぐらいの量ですが、それを売っても5円しかもうからないという薄利多売です。そんななかでは、1回トラックを動かすんだったら、一つでも多くの野菜を運びたい、というのが思いとしてあります。トラックに積める箱の数は決まっているから、いかに箱の中に効率よく詰め込むかが重要になってくる。そのなかで規格が出てきた。規格があって効率的に流通されているから、私たちはキュウリが夏野菜なのに秋に毎日80円で買うことができている。安い値段で野菜が買えるようになったのは流通業者の努力があるから、ということを、背景として今日ぜひ知っていただければうれしいなと思います。

消費者に求めるのは、買いすぎない、買ったら使いきるという当たり前のこと

八百屋の竹下は規格外だけじゃなくて、「そもそも規格をなくしたら、規格外野菜がなくなるじゃないか」という発想で、規格外も扱いますが、いいものも扱います。不選別ということです。今はスーパーの中にタケシタやコーナーがあって、産直コーナーを設けさせてもらっています。神戸の生産者から直接野菜を仕入れて神戸市内で販売する、地産地消の形をとっています。

最後に私たちが一消費者としてできることを伝えます。買いすぎない、買ったら使いきるという当たり前のことをする、というのがいいじゃないかじゃと思っております。 最後にご紹介ですが、WFP(国連世界食糧計画)さんの今月のゼロハンガーチャレンジ「食品ロス×飢餓ゼロ」で、#食品ロスWFP2021というのをつけてSNSに投稿すると、途上国の給食4人分になるという企画があります。私はチャレンジサポーターに選んでいただいているので、私の投稿をシェアするだけでも寄付につながります。TwitterとInstagramがあるので、ぜひそちらを見ていただいたらうれしいです。

Q&A

規格外の野菜は値引きしていますか? 利益は出ていますか?
プレゼンテーションにあったズッキーニとかブロッコリーの大きさの違いのときは、味が変わらないので、同じ値段で販売しています。規格外だから安くしてということはやっていません。でも最初に紹介したひび割れたトマトとか、傷のあるパプリカはそこの部分を切らないといけないというお客さんの手間がかかります。野菜としての価値が落ちているものは売り値も下げないといけないし、仕入れ値も下げないといけません。見た目とかで値段を決めるというよりは、難しいのですがお客さんにとって妥当かどうかをベースに値段を決めています。利益が出るかどうかは一般的な八百屋と同じなので仕入れに対して売り値をつけてちゃんと利益を出していこうというのでやっています。

農家さんからの反応はどんなものでしたか?
人によるんですけど、プライド意識を持って良いものを作りたいと思っている人で、B級品というか「出来が悪いものは出したくない」という人はいます。一方、有機とか無農薬で作ろうとする人たちって他に販路がない場合、既存の規格にはまって作ろうとしたら、正直作ったものの7割ぐらい捨てないといけないことになります。規格にはまって作ろうとしたら、やっぱりちゃんと農薬や肥料を使わないといけないんですけど。それができないでこだわりを持って作る人たちがいます。そういう農家さんたちはうちとの相性が良くて、「見栄えじゃなくて味で評価してもらえる」というので連携は進んでいます。

プレゼンテーションを終えてのコメント

ありがとうございました。みなさんの顔が見えなかったのは寂しかったですが、たくさんコメントをもらえてうれしかったです。規格外野菜を使った飲食店を開きたいという声や規格外野菜で商品開発をしたいという声をいただいたので、私がアドバイスというのはおこがましいですが、何かアイデアを出せるようなことがあるかもしれません。SNSなどで「このイベントに出たよ」と言ってくださったら、お話できるかなと思います。

インタビュー アーカイブ

ページtopへ