vol.36インタビュー
<プロフィール>
西アフリカのベナン共和国ゼ郡ドジ・バタ地区出身の24歳。食料問題解決に取り組むハンガー・フリー・ワールドの青少年組織、ユース・エンディング・ハンガー(Youth Ending Hunger/YEH)のベナン支部に所属し、若者の農業人口を増やす活動に参加。自分だけでなく、他の若者にも「自分ゴト」として地域の開発に参加するよう促すなど、地元ゼ郡の人々の「食料への権利」実現を目指している。大学では近代文学を専攻。
ユース・エンディング・ハンガー ベナン支部メンバーでアボメ・カラヴィ大学2年生のイェマリンさんに2021年10月15日開催の「World Food Night 2021」で発表いただいた内容をまとめました。※現地の通信状況や時間帯の関係で、当日は事前に録画したプレゼンテーションを上映しました。
ベナンでは109万人が食料不安に直面。8万人が深刻なレベルに
これからYEHベナンの農業起業活動について発表します。ぼくはイェマリンです。24歳の大学2年生です、アボメ・カラビィ大学で現代文学を専攻しています。ゼ郡のドジバタ地区出身です。地元の発展に関わりたくて「ユース・エンディング・ハンガー・ベナン(YEHベナン)」の活動に参加しました。自国のために行動を起こす若者を増やしたいと思っています。そしてゼ郡の「食料への権利」の実現にも貢献したいです。 活動について発表します。国際協力NGOハンガー・フリー・ワールド ベナン支部のサポートのもと、YEHベナンは活動しています。1994年にベナンで活動を始めたYEHベナンには、「食料への権利」実現に貢献したい若者が集まっています。メンバーは120人です。これは、2020年の会議でのYEHベナンの集合写真です。会議の議題は「食卓を健康的にするための若者の役割」でした。 ここでぼくの国、ベナンを紹介します。2021年現在、人口は約1250万人で、国の面積は約11万㎢です。気候は大きく二つに分かれ、南部は赤道気候、中部と北部は熱帯気候です。 ベナンはギニア湾に面し、三方の国境をトーゴとナイジェリア、ブルキナファソとニジェールに接しています。ベナン料理の特徴は、南部ではトウモロコシを使い、北部ではヤムイモを使うことです。 食料安全保障は2013年以降わずかに改善されています。数値は89%から90.4%に上昇。しかし国民の9.6%が食料不安、0.7%が深刻な食料不安にあります。人口にして109万人が食料不安の状態にあり、8万人が深刻な食料不安に直面しています。地方と都市部で食料不安人口を比較すると、地方は都市部の2倍近い15.3%の71万人が、都市部は7.9%の26.2万人が食料不安です。これらの数字の出典は2009年発行の食料安全とぜい弱性に関する報告書です。ゼ郡で2018年の冬に行われた食・健康・栄養に関する調査によると、5歳未満の子どもの25.46%が慢性的な栄養不良で そのうち、15.57%が中程度、9.89%が重度の栄養不良です。
若者が農業に携わることで、食料安全保障が実現
「食料への権利」実現に向けて、YEHベナンでは農業を始めました。2017年から2020年までの成果として、24の畑でトウモロコシ、キャッサバ、落花生、豆、パイナップルを育て、一つの菜園でレタス、キュウリ、ニンジン、パセリ、その他野菜を作りました。「農民の日」という農業体験イベントも開催し、これまで4回開催しました。この写真は、YEHが農業体験の際にたい肥を作っている様子です。次の写真は菜園で農作業をするYEHメンバーです。次の畑の2枚は右上がトウモロコシ畑の草取りで、左下がキャッサバ芋の収穫の様子です。 農業を始めた理由は、「食料への権利」実現に向けて地元産の食材を入手できるようにし、若者の農業起業を促すとともに、ぼくたちが前例を示すことで若者が農業を知って研修を受けるようになるためです。若者はベナンの食料安全保障のカギです。なぜならベナンは若年層が多く、2013年の国勢調査では人口の51.9%が若者だからです。若者は現役世代を形成し、国の未来でもあります。ただ、ベナンは農業国ですが、農家は高齢化しています。若者が農業に参加することで、ベナンの食料安全保障が改善します。一方、活動の発展を邪魔している要因がいくつかあります。農地が入手困難であること、土地がやせていること、降雨が不規則であること、そして学期中だとYEHメンバーが定期的に農作業に参加できないということです。対策としては、空き地の所有者に土地を利用させてくれるよう嘆願をする、研修で得た知識を活用する、降雨に合わせて活動を計画する、メンバーが活動できる時期に農作業を実施する、といったことをしています。
夢はベナンが西アフリカ最大の野菜の生産国になること。飢餓人口を減らしたい
ここでいくつかの体験談を紹介します。YEHで農園を始めてから、ぼくは家庭菜園を始めたいという友人にアドバイスしてほしいと頼まれました。その後友人はアドバイスに従って家庭菜園を始め、さらにたい肥作りもしています。別の友人は農業に全く興味がなかったのですが、YEHの研修に参加した後、トウモロコシを作る農業事業を始めました。こういったことこそがYEHで活動し続けるぼくの原動力です。「食料への権利」の実現のために若い人たちを巻き込みたいのです。 YEHでは地域のリーダーに必要なことを学ぶことができ、ぼくを大きく変えてくれました。ぼくの夢は将来ベナンが経済力のある国になり、西アフリカ最大の栄養価の高い野菜の生産国になることです。なので、輸入品よりも地元食材を選ぶことを勧めています。地産地消は農家を応援し、間接的に「食料への権利」実現に貢献できます。ベナンで健康的な食生活を送れない人口が減少する、そんな日が来るのではと大きな期待を抱いています。 最後に、ご清聴くださった日本のみなさんに心から感謝します。みなさんにも飢餓を終わらせるために行動してほしい、特に未来を担う若い人々には身近なところから行動を起こしてほしいと思います。YEHベナンのFacebookもフォローしてください。ありがとうございました。
Q&A
※イェマリンさんはイベントに参加できなかったため、Q&Aとコメントには数名のYEHメンバーと、活動をサポートしているHFW職員のウアンスー・ドナ・マークさんが代理で参加し、回答しました。 Q 活動するなかで一番うれしかったこと、一番残念だったことはなんですか? だいたいの活動ではうれしいと思うことが多く充実しています。残念な気持ちになるときは、困難にぶちあたったときです。困難はいろいろありますが、たとえば、かけた努力に対して収穫量が見合っていなかったり、売るときにお客さんがかなり値切ってきたりしたときは残念に思います。また、一部のメンバーが積極的に参加することによって、農作業の負担が偏ってしまうのも残念に思う点です。 Q アドボカシー活動はどのようなことをしていますか? アドボカシーが一番必要なのが土地の問題で、若者が農業をやりたいときに土地がないという問題です。土地を探すために村長さんや行政の偉い人や土地を持っているのに使っていない人に、土地を使わせてもらえないかと頼みに行ったりしています。お願いするときに、事実や現状に基づいて話をしなければならないので、きちんと調べてから依頼に行っています。 市役所に対してアドボカシーをすることもあります。特に栄養不良への対策でコミュニティレベルの活動をしているのですが、市の予算をもっと多くつけてほしいというような要請をしています。
プレゼンテーションを終えてのコメント
いろんな発表を聞き、食料の問題はどんどん複雑になっていると思いました。私たちはより注意してまわりで起きていることを見ていかなければならなりません。でも、解決に向けて希望を持っています。それぞれのレベルにおいて、必要な解決策をみんなで考えていけるようにしたいです。