vol.39インタビュー
<プロフィール>
株式会社honshoku代表/一般社団法人フードサルベージ代表理事
広告代理店での企画営業を経て独立。foodloss&waste の課題解決を手がける一般社団法人フードサルベージ設立。
食専門のコンテンツを企画、制作、販売する株式会社honshoku設立。
「サルベージ・パーティ」「ごはんフェス」「フードスコーレ」「Shokuyokuマガジン」など手がけたコンテンツ多数。
honshoku webサイト:https://www.honshoku.com/
今回は「いつもの食卓に、朗らかに、風穴を開ける」をモットーに、食に様々な角度から向き合う株式会社honshokuの代表である平井さんにお話を伺いました。
日常の積み重ねが食に対する関心へ
昔から食に関する職業に就こうと思っていた訳ではなかったという平井さん。現在の活動に至るまでの経緯は日常に潜んでいました。「大学では数学を専攻していて、食べることに直接関わるようなことを学んでいたわけではありません。でも一人暮らしを始めて自炊をするようになってから、食材の値段を知ったり、自分の作った料理を友人に褒めてもらうことで食に対してポジティブな考え方ができるようになりました。社会人になってからはまず広告代理店に就職したのですが、そこでフードロスやその現状にモヤモヤしているがアクションが起こせていない人たちがいるという裏側を知ることができました。それまで触れてきた食の楽しい側面も、その裏側にある現状も、どちらも失わず世の中に伝えていこうという思いが独立の動機でした」。平井さんが語ってくれた現在の活動への道のりは、まさにhonshokuが特長とする「『食卓』が原点でゴール」をなぞるようなものでした。では、どのような思いで活動に向き合っているのでしょうか。
「食から生きるを考える」を大切に
平井さんは現代社会における食の在り方に疑問を感じるといいます。「食は命をつなぎ、生きることに直結する行為であるはずです。しかし最近は効率を求めるあまり、食べるという行為が人間らしくなくなっているように感じます。遠回りかもしれないけれど、食という共通のテーマの下で、生きることや多様性について考えたいですね。この考え方は利益の追求と衝突することもしばしばですが、そういった姿勢から変えていきたいという心意気で様々な企業や自治体と対話を重ねながら企画を制作しています」。
「朗らか」に込めた想い
平井さんが代表を務めるhonshokuは「いつもの食卓に、朗らかに、風穴を開ける」というモットーを掲げています。「朗らか」という印象的なワーディングに込めた意味を伺いました。「みんなが多様性を受け入れるという意味で大切だと思っています。普段は人前であまり話さないような人も意見を発してくれるような、心地よい空気を作るうえでの心がけですね」。同時に、ゆっくり着実に歩みを進める姿勢についても語ってくれました。「僕たちは流行を作ろうとは思っていません。危機感を煽るのではなく、普遍的な価値を醸成するという姿勢が『朗らかに、風穴を開ける』に込められています」。
一人一人の食卓に還元
食に関わることはどうしても話の規模が大きくなりがちですが、それでも最終的には一人一人が好きなものを食べられる幸せを追求したいという平井さん。「人によって価値観は違うし、嗜好や文化、宗教などによって食にはその違いが顕著に出ると思っています。その多様性を受け入れながら共通の課題に向き合うためには好きなように食べられるといい、という答えに至るんです。ただ、好き勝手にしていいと言うとほかの社会問題が増幅されてしまう可能性もあります。それでも一人一人が自由に食べられることに幸せがあると思うので、両者のバランスを取ることこそが大切だと考えています」。
今後の展望:考える機会の拡大
これまでも食に対して様々なアプローチをしてきた平井さんですが、これからは市民の方々の考える機会をさらに増やしていきたいという。「大人になっていくとフードロスなどの現実を見て悲しくなったとしても、その現実を飲み込むようになります。それは決して悪いことではないけれど、そういう人たちを救いたいと僕は思っています。でも価値観も立場も違う人たち全員に当てはまる解決策はないので、少しでも多くの人が納得してくれるような方向性を考えていくしかないんだと思います。ただ今は考える機会が少ないですし、仮に社会問題に興味はあっても生活における優先順位が低い人も多いです。生きていくうえで切り離すことのできない食について考える機会や、すでに関心を持っている人が一歩踏み出すための機会を広げていきたいです」。 文責:水澤(ハンガー・フリー・ワールド フードシステム変革推進チーム学生インターン)