vol.34インタビュー
<プロフィール>
“ひとと地球の未来を描く”をVisionに掲げ、“食を通して社会課題を解決する“フード事業では、環境・調達・社会のさまざまな問題に取り組み、日本サステイナブル・レストラン協会より日本初の3星を獲得。“おみやげを通して社会的課題を解決する” haishopではさまざまなパートナーとの共創を実現し社会課題に取り組む。
株式会社Innovation Design サステナブルデザイン室ゼネラルマネージャーの表さんに2021年10月1日開催の「World Food Night 2021 with 横浜」で発表いただいた内容をまとめました。
一人の学びをスタッフ全員の学びに
私たちイノベーションデザインは、”「ひと」と「地球」の未来を描く”をビジョンに掲げています。主に二つの事業、“食”を通して社会的課題を解決するという飲食事業と、“おみやげ”を通して社会的課題を解決する小売り事業、について今日は話したいと思います。 私たちが社会問題に目を向けたきっかけは、たった1枚の10グラムのドライフルーツを作っている一人の農家さんとの出会いでした。横浜の市場で余ってしまったフルーツや野菜を、その農家さん一人でドライフルーツに加工されたものでした。その「10グラム」から年間612万トンの食料ロスがあるということを始めて知り、そこで初めてSDGsという言葉も知りました。 そこから一生懸命食品ロスについて勉強を始めました。日比さんの話にもありましたが、食品ロスの後ろ側にはロスを処理するためのCO2の発生の問題とか、大量廃棄大量生産の社会だからこそ水資源の枯渇があったり、一方で世界に目を向けると貧困の問題があったり、本当にたくさんの複雑な問題が絡みあっていることに気づきました。そこで私たちが始めたのは社員全員で社会的な課題の学びを深めるという研修をした。たとえば、料理長がサプライチェーン上のCO2排出の問題について、社長を含め全スタッフの前でプレゼンテーションをします。社会的課題は何なのか、世界で行われている改善のアクションは何なのか、では自分たちに何ができるのかをひとり30分でプレゼンをします。ブライダルのマネージャーが全然関係ないのにアニマルウェルフェアについて調べてくれたり、法人営業のスタッフが海洋プラスチックついて調べてプレゼンしてくれたり、経理のスタッフが食の健康ついてプレゼンしてくれたり、ひとりの学びを全員の学びにしています。そうすることで、キッチンスタッフ、ホールスタッフ、ウェディングプランナーというだけではなくて一人のサステナブルデザイナーとして活躍しています。
お客様との対話を生み出すサステナブルデザイナーたちのさまざまな取り組み
活躍の舞台の一つは横浜馬車道にあるKITCHEN MANEです。横浜市の食べきり協力店に登録させていただいています。ほかに haishop cafeとレストランKIGIがあります。ここを舞台に弊社のサステナブルデザイナーの活躍を紹介させていただきます。 最初はおすそ分けプロジェクトについて。酒井さんもたくさん素敵なアクションを紹介していただきましたが、僕たちも日本の昔からあった古き良きおすそ分け文化「ちょっと作りすぎちゃったから食べてよ」「おいしいものがとれたからよかったら食べてよ」という文化をもう一回感じてもらいたいと、"OSUSOWAKE"プロジェクトを開始しています。そこで提供するのは、「実はこれ規格外のトマトです」「熟しすぎているトマトなんです」「でもおいしいね」という対話が生まれる食材です。そこで食品ロスに興味をもってもらえます。またレストランで料理を提供するだけでなく、「お店の真ん中に八百屋を作ろう」ということで、規格内・規格外を問わず、農家さんが愛情をこめて作ってくれた野菜をすべてぼくたちが買い取って、八百屋という形だったり週末にマーケットという形で地域のみなさまに販売し、地域の人に食品ロスについて対話を通して伝えています。 また、これは実施しているスタッフに感謝しかないのですが、「わずらわしさを愛する」ということで、店舗内でコンポストを置き、毎日営業終了後に生ゴミを大事に大事に運んでコンポストに入れています。ただ入れるだけでなくゴミを自分たちが何キロ出しているか、ゴミの計量まで自分たちで行っています。 ほかに、入社1年目から3年目までの若いZ世代を中心に、本当に身近な問題から温暖化まで食品問題について知ってほしいということで、ワークショップをやっています。日本人一日139グラム捨てているんだよ、ということを親子でわかるように楽しいワークショップを自分たちで企画を考えて実施しています。そうすると、感想で小さいお子さまが「明日から食べ残ししません」というメッセージを残してくれます。こうやって食品ロスを少しずつなくしていこうという活動をしています。 KITCHEN MANEでは価格のないコースメニューを設けています。召し上がったお客様に価格を決めていただくことにしています。じゃあ何を提供するのか。たとえば、前菜だったら、地球の水産資源を救う一皿ということで、実は僕たちが使っている魚はすべて、もったいない魚、廃棄されてしまう魚、未利用魚と呼んでいるのですが、規格に合わずに捨てられたり養殖のエサになったりする魚を漁師さんから直接買い取っています。なので当日まで何がくるかわからない。でもキッチンスタッフは心が広くて、届いた食材に向かい合って今日何を提供するか考えています。水産資源が枯渇するなかで今あるものを大切にしたいというキッチンスタッフがいるからこそできるアクションなのかなと思います。締めのデザートは賞味期限切れの食材、乾パンなのですが、非常食として大型商業施設で保管されている賞味期限切れの乾パンを使ったチーズケーキです。お客さんに「普通のガトーショコラと賞味期限切れの乾パンを使ったチーズケーキとどちらがいい?」と聞くと、8割9割のみなさんが賞味期限切れを選んでくださいます。そういった形でメッセージを伝えています。 また、学生と一緒にクロスカリキュラムを行っています。そこで先ほどの八百屋やマーケットでの規格外野菜を中心にしたメニューを考えてもらったんです。ただ、メニューを考えただけでは世の中を変えられない。世の中に発信するからこそ世界が変わるというころで、実際にランチメニューとしてお客様に提供いたしました。
学んで行動し、行動することで仲間を見つけて社会問題の解決に
飲食店だけがフードロスを解消するのではなく、haishopという小売り事業もやっています。お土産という形で、先ほどの農家さんのドライフルーツを量り売りで販売させてもらっています。「おいしいから買った」というお客様が、家族、恋人、友人など大切な人に、「これは市場で行き場を失っていた廃棄されそうになったフルーツなんだよ」と、みかん、巨峰、ドライフルーツと一緒にストーリーを伝えてくれる。そして食品ロスとか環境問題に目を向ける仲間が一人ずつ増えていく。そういうことで社会問題を解決していこうというのがhaishopです。規格外の野菜を使ったジュースや地元の養蜂家が作ったはちみつなどもあります。 また、楽しく社会課題を変えていこうということで、FILM FOR SOCIAL CHANGEというソーシャル映画祭を毎月2回やっています。食品ロスの映画を上映した時は、写真のようなお料理を提供いたしました。みそ汁は規格外の野菜を使い、おにぎりはだしをとるのに使ったカツオのおかかを使っています。 僕たちが大切にしているのは行動こそ真実ということです。先ほどの日比さんの話で学びをいただくというなかで、ただ消費するだけでなく、せっかく学んだことを行動に移す。そして、行動することで一人でも多くの仲間を見つけて社会問題を解決しよう、ということがぼくたちの大切にしているものになります。今日参加してくださっているみなさんにも、ぜひ、いろんな発表のなかで、私らしい小さなチャレンジを見つけていただいて、大切にしてもらいたいと思います。
Q&A
Q: 価格を決めてもらう利点は何でしょうか?対話を生むことでしょうか。 表さん: スタッフとのコミュニケーションがより重要になってくると思います。僕たちのメニューも、“日本の未来を担う一皿”という形で提供していて、「それは何?」ということで必ず対話が生まれるきっかけにしています。価格を決めてもらうというお願いを事前にしているので、最後に社会課題を真剣に考える瞬間が一瞬生まれるんですね。食事中は楽しんでいただいてその一瞬が何かのきっかけになればいいなと思っていて、そこが利点だと思います。
プレゼンテーションを終えてのコメント
今日はありがとうございました。参加者のみなさまから多くコメントをいただいたKITCHEN MANEについては今残念ながら休業中ですが、同じ場所にhaishop cafeがあり、本社のサステナブルデザイナーがそろっていますので、ぜひ気軽に声をかけてコミュニケーションをとってもらえればと思います。みなさん私一人ではないのだ、たくさん仲間がいるのだとアクションへの勇気がわくし、ぼくたちもみなさんの声に勇気をもらえると思いますので、共に自分らしいチャレンジをしていきましょう。 2021年10月1日開催の「World Food Night 2021 with 横浜」イベントレポートはこちら